学生時代、自分が写真家になるとは考えもしなかった。
建築が大好きで、毎週のように徹夜で設計の課題をこなし、建築家になりたいと思っていた。
学部を卒業後、カルロ・スカルパの弟子だった豊田博之氏の事務所に入所するが、実力が伴わず挫折。大学院に入り直した。
大学院時代には、学業そっちのけで、友人たちとヨーロッパをレンタカーで総走行距離1万2千キロ移動しながら建築を見まくり、一人でバックパックを担いで中東の国々を廻り、写真を撮っていた。
そして、設計と同時に建築写真の楽しさを知ってしまった。
松田平田設計での入社試験の面接では、設計のポートフォリオだけでなく、自分が撮りためた建築写真のポートフォリオも持参した。思いのほか写真の方にも話をしたと記憶している。
松田平田設計では、BCS賞、東京建築賞、グッドデザイン賞などを受賞する作品を担当し、多くの経験をさせてもらった。
設計事務所で働いている頃、長期休暇を取って旅行すると決まってバナキュラー建築を撮るようになっていった。そこには普段ミリ単位で設計をしている建築とは違う魅力があった。土や木そして石など原始的な素材だけで出来ていて、圧倒的なエネルギーを発していた。
アフリカの土の建物を撮りたい。それには写真家になるしかない。
2003年 、日暮写真事務所を設立した。
独立のきっかけはバナキュラー建物に魅了さあれた事であったが、やはり現代建築も好きである。設計事務所時代の経験と設計の意味をくみ取れる視点が強みとなり、住宅から競技場まで大小様々な写真を撮り続けている。
また、新たな時代に対応するべく、ドローンを使った撮影や動画撮影、3D撮影を取り入れVRを体験できるようにするなど、建築の魅力の表現方法を日々探っている。